みんなに知って欲しい!災害時にペットを連れて避難所生活をすることは可能であること

地震

イヌやネコ、その他ペットを飼っていらっしゃるご家庭は多いと思いますが、もし大地震などの災害が発生して避難所生活を強いられる際、大切なペットを連れて行くことは可能なのでしょうか。

結論を先に言ってしまうと可能です。ただし多くの課題があるのと、事前の準備が必要になってきます。飼い主の方は普段のペットの世話だけでなく、こういった際に対処できるかどうかの覚悟が必要になります。

みんなに知って欲しい!災害時にペットを連れて避難所生活をすることは可能であること

キーワードは「同行避難」

ペットを連れて避難所や避難場所に行くことを「同行避難」と言います。これは「動物の愛護及び管理に関する法律」(動物愛護管理法)でも認められていることで、環境省を中心に地方自治体に普及啓発活動しているものになります。

具体的には、平成23年12月に開催された中央防災会議(内閣の重要政策に関する会議の一つとして、内閣総理大臣をはじめとする全閣僚、指定公共機関の代表者及び学識経験者により構成)において「防災基本計画」の修正が行われ、避難場所や仮設住宅における家庭動物の受け入れ配慮事項が追加されるとともに、「被災した飼育動物の保護収容に関する体制整備や避難場所等における飼育動物の収容」が追加されました。

また、平成25年9月1日に施行された改正動物愛護管理法において、災害時における動物の適正な飼養及び保管に関する施策を、都道府県が策定する動物愛護管理推進計画に定めることが追加されるとともに、動物愛護推進員の役割として、災害時に国または都道府県等が行うペットの避難、保護等に関する施策に協力することが追加されました。

要するに災害時であってもペットの受け入れに配慮しなければならない、というものです。この「配慮」という表現がやっかいなのですがそれは後ほどふれます。

なにより大事なのは飼い主の意識と備え

当たり前の話ですが、同行避難以前に、大災害時に飼い主自信や家族の安全確保が出来ていなければどうにもなりません。十分な食料や水、常備薬などの避難グッズを用意しておき、事前に避難場所・避難所への避難ルートやハザードマップを確認しておくことが大切であり大前提でもあります。

そしてペットと同行避難をするつもりの方は、避難所で他人に迷惑をかけないように基本的なしつけをしておく必要があります。大勢の方が体育館などに寄り添って避難所生活をすることになります。基本的に避難部屋にペットは連れ込めないのですが、近づいた知らない人や他の動物に対して吠えたり噛みついたりしないようにしておくとか、ケージに入れたらおとなしくなるようにしておくとか、トイレシートできちんと排泄するように覚えさせるなどは日頃からのしつけが重要です。もちろん狂犬病予防注射や各種ワクチン接種などは当然しておかなければなりません。

避難所までペットを連れてこられたとしても体育館の中でともに暮らせる可能性は極めて低く、屋外の支柱につなぎ止めるか、別室内でケージに入れておくことになります。慣れない場所でも鳴いたり吠えたりしないよう調教しておくとよいと思います。

基本的に庭でイヌを飼われているご家庭ではケージをお持ちでない場合があると思いますが、こういうときはケージが必要になります。長いことペットを飼っていると一緒に旅行に行ってみたり動物病院に連れて行くこともありますから、早いうちにケージを買って慣れさせておくことが必要です。

大切なのはしつけだけではありません。ペット用の避難用品の準備もしておかなければなりません。避難所の備蓄品にペットグッズはないと思っておいた方がいいからです。先に挙げた「ケージ」「エサ・ペットフード」「排泄物処理関係」の3つは最低限必要です。

ハ虫類なら数日エサが無くてもいいのかもしれませんが、冬期の避難では温度管理も必要ですし、生餌や冷凍ワームなんかはどうするかという課題もありますが、、、そのへんは詳しい方のサイトをご覧になって下さい。

ペットの分まで食料を配給してもらえたとして、イヌやネコは人間が食べるものはだいたい食べることができますが、避難所で支給される食料にはペットにとって塩分が強すぎるものなども含まれますので、特に高年齢や生まれて間もないペットをお連れの方は対策が必要です。また慣れない環境で慣れない食べ物を与えてもペットにはストレスが重なるだけですので、ペットフードも避難グッズに入れておくと安心です。

 

同行避難の課題

前述した「ペットの受け入れに配慮しなければならない」ということ。「ペットの受け入れをしなければならない」ではないのです。

また、環境省が発表した「災害時におけるペットの救護対策ガイドライン」には同行避難の定義を次のようにしています。
https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/2_data/pamph/h2506/ippan.pdf

○同行避難
災害発生時に、飼い主が飼育しているペットを同行し、避難場所まで安全に避難すること。同行避難は避難所での人とペットの同居を意味するものではない。

同行避難は安全に避難することであって、避難所でペットと一緒にいれるかまでは断定していません。

そして次のようにも書かれています。

避難所におけるペットの存在が、人々にとってストレスやトラブルの原因となるかどうかは、飼い主自身の意識と、平常時からの備えに左右される。

そりゃそうですよね。ただでさえ震災ストレスを抱えて気が立っている人も多いでしょうから、動物特有の鳴き声やニオイ、アレルギーなんか問題になることもあるはずです。ノミや衛生面を過剰に気にされる方もいらっしゃると思います。

したがって現地動物救護本部等、緊急災害時動物救援本部、動物救護施設、地方獣医師会の指導の下、ペットを預かってもらうなどの方法が考えられます。

実際の避難所における同行避難や動物救護については、基本的に市区町村単位の地方自治体に委ねられています。例えば、新宿区は平成15年9月に東京都獣医師会新宿支部と災害時における動物救護活動に関する協定を結び、ルールや基準、方針、そして各種対策や体制などを丁寧に検討しています。

しかし実際に避難所に同行できるペットは、イヌ・ネコ・ケージに入れられる程度の鳥やげっ歯類に限られる場合が多く、馬などの大型動物は難しい状況です。

安全確保しつつも離ればなれになってしまう場合がありますので、迷子札を付けておくとか、できれば確実な身分証明となるマイクロチップを装着し、AIPO(Animal ID Promotion Organization(動物ID普及推進会議))に登録するといった対策をしておいた方が安心です。

マイクロチップについて|公益財団法人 日本動物愛護協会

まとめ

結局のところ、日頃の飼い主の準備と災害時の状況判断ということになります。ただ、昔と違って法的には避難するところまではペットと一緒にいれるわけですから、東日本大震災のように放浪動物を増やすこともなく安全を確保できることは安心していいと思います。

しかし動物愛護管理法・改正動物愛護管理法や、中央防災会議の防災基本計画などを根拠に、災害時の動物愛護や同行避難等の推進がされ、「災害時であってもペットの受け入れに配慮しなければならない」ことにはなっていますが、現実的には被災地の避難所を運用する市区町村に委ねられており、人員や環境設備などの問題から、全ての避難所がペットを受け入れているとは言えない状況です。

残念なことですが、そんな有事に大声でクレームをつけるような人間にはなりたくないものです。

実際に先日の台風19号においては関東甲信越から東北地方にかけて50を超える河川が氾濫し、たくさんの避難所が運営されましたが、ネット上では「ペットを受け入れてくれなかった」という声がたくさん聞こえてきています。そうしたなか、被害の少ない地域でペットを受け入れてくれる有志がおられたこともありがたいことです。仮にこうした方にお願いすることとなっても、上記のしつけや備えは必要となることを覚えておくとよいでしょう。

ペットをこれから飼う方、ペットを飼っていて大切にしている方は、環境省の出したガイドラインを一度目を通しておいて下さい。こちらは一般向けの抜粋バージョンになります。
https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/2_data/pamph/h2506/ippan.pdf

また自治体の方やボランティアをする可能性のある方はフルバージョンをご覧になって理解を深めていただきたく思います。
https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/2_data/pamph/h2506/full.pdf

都内では割と学校避難所における動物救護の検討が進んでいる新宿区のサイトはこちら。
https://www.city.shinjuku.lg.jp/seikatsu/eisei01_001004.html

 

以上、最後までご覧下さり誠にありがとうございました。

タイトルとURLをコピーしました