教科書通りの防災グッズだけではダメ!災害時に本当に役立つ便利グッズの選び方

地震

当ブログ「地震対策JP」は学者や専門家とは違い、一般の方に密着した災害対策を調査して記事にしていますが、今回は一般的な防災グッズ一式だけでは非常に不便な思いをする、というお話です。

震災の日や3.11などが近づくと、様々なメディアが便利な防災グッズを紹介するようになります。その中でも防災グッズ一式が入った防災リュックなどもあって、とりあえずこれを買っておけば安心とお考えの方もいらっしゃるのではないでしょうか。水や食料の備蓄も1週間分が目安と言われてたりしますよね。

確かに基本的な防災グッズ一式があるとないとでは大違いです。しかしそれだけでは非常に困ることが当記事でご理解頂けます。他サイトではアクセス数稼ぎのために数本に分けて書くような内容を、ぎゅっと1本にまとめました。斜め読みでいいので、この記事だけ読んでもらえれば何が必要なのか分かるはずです。

まずは都内で大地震を経験するAさん家族の避難行動などをシミュレーションします。

教科書通りの防災グッズだけではダメ!災害時に本当に役立つ便利グッズの選び方

都内で大地震を経験したAさん家族の避難行動をシミュレーション

Aさんは都内のマンションの10階に住んでいます。妻と小学3年生の娘、保育園年長組の息子の4人家族です。ある日、皆が寝静まった夜中の午前1時過ぎ、に大地震が来て目を覚まします。

大きな揺れの後、できればブレーカーを落とした方がいいくらい電気を使ってはいけません。配電線やガス管が破損しているかもしれない状況で電気を付けるのは通電火災と呼ばれ、大変危険だからです。最近の都市ガスは震度4以上を感じると元栓が止まるようになっていますが、できれば避けたい。でも暗くてはしょうが無いから室内灯を付けようとスイッチを入れますが、照明は点きません。「停電だ」と気付きます。

そう。ただでさえ真っ暗な夜中に、一時的とはいえ最も安全に避難しなければならない時に停電が起こります

寝室で激しい揺れに家族全員が気付き、子どもたちは泣き叫びます。母親は子どもたちを寝室内の安全な場所で布団にくるみ、父親は避難をしなければと「リビングに非常用LEDライト(懐中電灯)があったな」と行動を始めます。

東京都内では中層・高層マンションが多くありますが、10階以上の部屋などは1階の部屋と比べて揺れが大きく感じます。多少揺れた方が地震の力を逃がすことが出来、建物の崩壊を免れるからです。耐震性の高いマンションであっても、地震で崩壊しないだけで揺れが少ないわけではありません(制震ゴムを土台に置いたマンションは除く)。

中高層マンションは地震による震動が治まっても1〜2分は台風の中の船のようにゆっくり長く続き、住人達は軽い船酔い状態となります。そんな足下のふらつく中、LEDライトを探しに行こうとします。

兵庫県南部地震の経験者に聞くと、ブラウン管の大型テレビが飛び跳ねたと言います。そして冷蔵庫や食器棚は踊るように揺れ、軒並み倒れたとのことでした。

実際に家具が倒れ、食器や小物が散乱するリビングまでなんとかたどり着き、非常用LEDライトを手に入れた貴方は寝室に戻り「お前ら大丈夫か」などと言うと、二発目の余震が来ます。本震とあまり変わらないほど大きく揺れます。

これは避難しなければならない。事前に「重ねるハザードマップ」などで地域の一次避難場所を確認していた彼らは、余震が一旦静まってから防災リュックを持ち避難を開始します。

子どもの手を握る母親にリビングで手に入れたLEDライトを渡し、父親は慌てて防災リュックの中のLEDライトを点けてマンションから逃げます。エレベーターは当然動きませんから、階段で10階を降りなければなりません。幸い非常灯が点いていたため完全に暗闇ではありませんが、足下には他人の防災リュックからこぼれた荷物が点在して歩きづらく、他の住民も一気に集まったため非常階段はパニック状態です。

ここで、非常用LEDライトを持っていると片手が塞がってしまうことにAさんは気付きます。右手には非常用LEDライト、左手には息子を握る手があります。バランスを崩してもどうにもなりません。命からがらとはこのことを言います。

なんとか地上に降りると街灯の点かない普段歩き慣れた道を一次避難場所である近所の公園までたどり着きます。一次避難場所は揺れや火災の心配が少ないだけで、子どもを連れてこのまま夜を明かすわけにもいきません。集団で避難所となる小学校まで移動します。

ここから避難所生活が始まります。

「耐震工事済みの小学校なのだから教室に分けて住ませてくれよ」と思っても、結局は本部が安全管理しやすい体育館で雑魚寝となりました。備蓄していた毛布にも限りが有るので防災セットのアルミ毛布を取り出して足しにします。

避難所は自家発電により照明や電気は使える状態でした。しかしディーゼル発電機に必要な軽油には限りがありますから、極力節電をしなければなりません。夜は防災拠点や医療部屋以外は消灯となります。中には「暗くしてくれないと寝れない」と言う方もいますから仕方がありません。

しかし興奮してしまっているのかなかなか寝付けない。スマホの充電は温存したいのでネットを見るのもなるべく控えたい。携帯ラジオで情報を得ながら気持ちが落ち着くまで起きていたい。しかしどこからか「ラジオの音がうるさい!」などと言う声が聞こえてきて止めざるを得ません。あの人も寝れないんだろうな、などと思いながら暗闇の中、何もせず眠れず朝を迎えます。

翌日の昼頃になると近所のコンビニの在庫が避難所に到着して、一人おにぎり1個のような最低限の食料が配られます。足りないよこんなんじゃ。持参した非常食は子どもに優先的に食べさせて、残ったら母親が食べるようにします。

断水の影響で自由に水を飲むことが出来ず、飲料水も最低限は配給されますが、すぐに喉が渇くAさんには足りません

災害用の臨時トイレは数台ありますが、いつも行列で2時間待ちは当たり前。男性達はいつの間にか場所を決め合って野ションをしますが、女性はそうも行かず並ばざるを得ません。生理用品が必要と保健室から少し分けてもらうにもまた並んでいる状況。

寝不足で空腹だけどやることがない状況で、子どもが「退屈だ!」と言い始めます。外は危ないから避難所から外には出せません。ボール遊びさせるわけにもいかず困り果てます。

心労と寝不足と空腹なとき、ふと「タバコ吸いたい」とAさんは思います。しかし救援物資にタバコはなく、強制的な禁煙となります。大地震の翌日夕方には停電は治まって電気は普通に使えるようになりましたが、安全面から体育館以外の立ち入りは禁止されていて、充電できるコンセントは限られているためスマホも自由には使えません。

というかそもそも自分用のUSBスマホ充電器を防災リュックに入れていないためコンセントが空いていても使えません。避難所に備蓄されていた数台の充電器を皆が取り合うように使っています。一人あたりの充電時間は決められているのでフル充電にできません・・・・

これ以上は長いと読むのも大変なので終わりにしますが、Aさん、辛そうですね。

教科書通りの防災グッズだけでは減災することができない

お気づきでしょうか。上記シミュレーションでは、防災リュックに入っているいわゆる防災セットに入っていたもので本当に使えたものは非常に少ないのです

減災」という言葉があります。災害が起きてしまった後にいかに被害・負担を少なくするかという考え方です。避難するのは数日かもしれませんが、非常に辛そうですよね。つまり防災リュックに入っていた防災セットでは避難は出来ても減災にはあまりならないのです。一般的な防災セットだけでは足りないのです。

と、防災リュックの中身云々の前に、ご自宅内の避難路を確保するためには、食器棚や冷蔵庫などが倒れないよう支え棒をしておくのは大前提です。倒れた棚や冷蔵庫がドアを封鎖して外に出れないのは最悪だし、食器などが割れて足の踏み場のない状況では自宅内で動きが取れなくなるからです。もし対策していない方はこの機会にご検討ください。

さらにはスリッパやサンダルを人数分用意しておくと室内での行動がしやすくなります。防災リュックにはスリッパは1足しか入ってませんよね。例えばこういうところです。

防災リュックに入れておくべき本当の便利グッズ

ここからは防災セットに普通は含まれないものを具体的にご紹介します。

まず防災セットの他に準備していた、リビングの非常用LEDライトですが、取りに行くの大変でしたね。たしかに家の中でアクティブにしている時間が最も長いのはリビングですが、家にいる時間で最も長いのは寝室です。ですから寝室にも必ず非常用LEDライトが必要です。そして防災リュック・避難用持ち出し袋は寝室に置いておきたいものです。

そして暗い非常階段や夜道を非難するときには、できれば一人一台のLEDライトがあるべきです。なぜなら子どもは暗いだけで不安がるし、もし途中で手を離してしまった場合に暗闇から子どもを探すのは困難だからです。しかし避難時にはできれば両手が空いていた方がいいし、子どもはLEDライトを落としてしまうかもしれません。お年寄りも同じです。その対策としては、首からかけるLEDライトを常備しておくことです。

そして避難所生活です。日本は他国より遅れているのは間違いないのですが、やはり体調が急変したりする人が発生した場合に対応しやすいよう1カ所にまとめての生活を余儀なくされます。避難者の自由よりも、万が一の対策が優先されます。つまり自由よりも人命を優先しています。

この場合は、プライバシーや気が立っている他人に配慮しなければなりませんが、できるだけ自由に過ごしたいですよね。そのためには「スマホ」「照明」「音声」「暇つぶし・娯楽」が重要です。

まず、iPhoneやAndroidなどのスマートフォンですが、実家や知人と連絡を取り合ったり、情報収集や気分転換などに大いに役立ちます。近年の大震災でも携帯の電波はほぼ止まりませんからありがたいものです。ただし気になるのは充電です。情報が得やすいと動画などを見ているとバッテリー残量がどんどん減ってしまいます。困らないためには充電済みのモバイルバッテリーとUSB充電器・充電用ケーブルの一式も防災リュックに入れるべきです。最近のiPhoneやAndroidスマホの容量は5000mAhほどあるため、数回フル充電できるものだとこのあたりになります。

モバイルバッテリーを避難グッズの一つとしている人は多いと思いますが、USB充電器・充電用ケーブルは忘れがちではないでしょうか。コンセントの利用制限がある場合に備えてiPhoneやiPadなどでも急速充電できるPowerDelivery対応で、かつ複数台同時充電できる充電器をお勧めしたいです。

次に乾電池です。日本製・使用推奨期間10年・液漏れ防止を全て叶えた電池をお勧めします。パナソニックのエボルタ乾電池、マクセルのボルテージ乾電池あたりが対象となります。そして12本パックだとしたら、6本ずつに分けて保管します。長期保存により万一液漏れしても全てダメにならないようにするためです。また電化製品は単三電池で動くものに統一しておくと便利です。

次に非常用LEDライト・懐中電灯の話を再び。避難行動用のLEDライトは基本的に前方を強く照らすためのものが大半ですが、避難生活用では弱くても良いから長時間電池が持ち、ランタンのように自分達を照らしてくれるものが必要です。もし普通の懐中電灯・LEDライトしかない場合は立ててコンビニ袋をかぶせると前では無く周りを照らすようになりますので便利です。しかし電池が数時間しか持たないものが多いので、やはりランタンタイプのLEDライトがお勧めです。こちらは単三電池6本です。

情報収集用の携帯ラジオについても、スピーカーから聴いたのでは避難所では近所迷惑になります。イヤホンが付けられるラジオを選びましょう。なお備蓄するときには乾電池を抜いた状態にしておくことをお勧めします。数年放置すると液漏れして使えなくなります。こちらは単三電池2本で動きます。

ちなみに携帯ラジオに電池を入れっぱなしにして数年放置するとこのように液漏れしてラジオがダメになります。

飲料水や食料にも困ります。別の記事でご紹介している「日常備蓄」をしていれば、高価でまずい非常食・非常用飲料水ではなく、日常生活で購入しているドリンクやレトルトなどを持って行けば良いので経済的でもあります。我が家では玄関の通路に多めに買ったドリンクを置いているので、避難時にも持って行きやすいようにしています。

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止めることの出来ない生理現象にももっと気を遣う必要があります。携帯用トイレや長時間タイプのナプキンやタンポンなどの生理用品、乳幼児をお持ちでしたら紙おむつ(できれば布オムツも)を多めに防災リュックに入れておきたいものです。

また、子どもで無くても退屈というのは不安とストレスを生じさせます。電気・電池を使わずに遊べるものとして、トランプなどを防災リュックに入れておくと捗ります。ご年配の方なら携帯将棋盤、花札、小さなお子さんなら絵本や塗り絵セットなどを入れておきましょう。トランプ遊びだけでなく言葉遊びもできるドラえもんの迷言シリーズがお勧めです。

愛煙家の方はタバコとライター、携帯灰皿も防災リュックに入れておきましょう。吸わない人は「そんなときに吸わなくても」と言われるかもしれませんが、「そんなときだから吸いたいんだよ!」となりますから。ただし避難所の方々は気が立っていますので、健康被害が無くても臭いがするだけで発狂する方もいらっしゃいます。吸う場所は気をつけましょう。

避難所に行かずご自宅で過ごす方の減災方法

以上は避難所生活のシミュレーションに基づいたご提案でしたが、避難所に行かずご自宅で過ごす方の減災方法について少しふれます。

プライベートが確保できる反面、電気や水道・下水道の復旧は、基本的に避難所およびその周辺が優先されますので、不便な生活であることには変わり有りません。

最も困るのは生活用水です。給水車は避難所にしか来てくれませんから、水をもらいにいかなければなりません。庭付き一軒家なら大きなバケツもあるでしょうけど、マンション暮らしだとあまりないかもしれませんね。飲料水として数日品質を維持するなら空気に触れない水タンクタイプがお勧めです。

一時的な飲料水、または生活用水としてなら折りたたみできる防災用の水くみバケツが省スペースで便利です。

大地震を経験された方が口々に言うのは「お風呂の水を捨てなければよかった」です。お風呂はサイズによりますが200リットルほどありますので、これだけあればトイレの水や洗濯に便利だと言います。お風呂に入り終わったら流してしまうのでは無く、入れ替える前まで貯めておいた方が安心ですね。

また洗い物が自由に出来ませんから、食器にはサランラップなどを巻いて食事して、汚れたら捨てるようにします。ラップは包帯代わりにもなるので防災備蓄用品としては優秀です。

次に困るのは食料です。食糧の配給もやはり避難所でしか行われませんから避難所までもらいに行くわけですが、たまに「この食糧は避難所の人たちだけのものなので、差し上げられません」と言われることがあるそうです。確かに限りある救援物資をうまく分配するために、まずは避難所の人数に対してのみ計算している側からすると、そういう理屈も成立します。厳しいようですが「自主避難を選んだんだから自分のことは自分で対処しなさい」ということです。

したがって自宅で被災生活を過ごしたい方は、食料は自宅に備蓄しておく必要があります。繰り返しになりますが日常備蓄をお勧めします。念のため人気の非常食をご紹介しておきます。

 

まとめ

マンション暮らしの家族が自宅から避難して避難所生活した場合にどんな気苦労をするかというシミュレーションを基に、通常世間で言われている避難グッズだけでは不十分であること、多少のアイテムを追加することでそれらが解消することをご紹介しました。

また自宅で被災生活をする場合は避難所生活とは異なった苦労が生じるため、それに対するアイテムが必要であることもお伝えしました。

よくある防災グッズ一式入りの防災リュックを購入するだけで無く、数百円・数千円の小物グッズをいくつか追加しておくだけで、かなり減災することができることをご理解頂けたかと思います。

大地震や風水害がないことが一番ですが、行政や地方自治体は生命の危機は救ってくれても、生活までは見てくれません。自分で対策することが大切です。

 

以上、最後までご覧下さり誠にありがとうございました。

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